下痢
下痢とは
下痢とは、何らかの原因により便の水分量が増えることで便が軟らかくなったり液状になること、かつトイレで排便する回数が増える(3回/日以上)状態のことを指します。
発症してからの期間で大別して急性下痢と慢性下痢にわけることができます。
誰でも経験するありふれた症状ですが、中には重篤な病気が潜んでいる場合もあるため、適切な判断と対処が必要です。
急性下痢
おおよそ2週間程度で症状が改善する下痢のことを指します。
急激な腹痛、吐き気、嘔吐、発熱、ときに血便を伴うことがあります。
慢性下痢
4週間以上つづく、あるいは繰り返す下痢のために日常生活に支障が出る状態のことを指します。
腹痛、便意切迫感、便もれなどにより、学業や仕事・睡眠などにしばしば影響をおよぼすことがあります。
急性下痢の原因疾患
感染性腸炎
急性下痢の原因の9割が感染性腸炎によるものという報告もあります。
主に細菌性とウイルス性に大別されますが、多くの原因がウイルス性です。
ウイルス性腸炎の原因として有名なものは、ノロウイルスです。
ノロウイルスは冬季に流行しやすいウイルスです。
ノロウイルスに感染した患者の糞便や吐物を触ることで感染したり、家庭や共同施設での飛沫感染、あるいはノロウイルスに汚染された二枚貝(牡蠣など)を食べることで感染します。
嘔吐や下痢、腹痛が主な症状です。
そのほか、下痢をきたしやすいウイルスはロタウイルス、腸管アデノウイルスなど多岐にわたります。
細菌性腸炎は、ウイルス性腸炎より症状が重くなる傾向にあります。
ときに高熱がつづき、血便が出ることもあります。
多くが細菌に汚染された食品を食べることで感染しますが、汚染された便や吐物を触ることで感染することもあります。
鶏肉が原因となるカンピロバクター、卵が原因となるサルモネラ、牛や豚が原因となる腸管出血性大腸菌、魚介が原因となる腸炎ビブリオ、おにぎりやサンドイッチなど人の手を介して感染する黄色ブドウ球菌などが代表的です。
薬剤性腸炎
薬剤を使うことで引き起こされる腸炎です。
代表的なものに、クロストリジオイデス・ディフィシル腸炎や抗生物質起因性急性出血性大腸炎、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDS)腸炎などがあります。
その他、抗がん剤でも腸炎を起こすことがあります。
クロストリジオイデス・ディフィシルは、人の腸内細菌の一種です。
感染症治療などのために抗生物質を使うことで、腸内環境のバランスが乱れ、異常に増えて腸炎を引き起こします。
下痢・食欲不振・嘔吐・腹痛・発熱などのつよい症状を引き起こします。
入院されている患者さんに多く起こると言われていますが、外来で飲み薬の抗生剤を飲んだ方でも起こることがあります。
抗生物質起因性急性出血性大腸炎も、ペニシリン系抗生物質の使用によりおこる腸炎です。
腹痛、下痢、血便などが主な症状といわれています。
薬のアレルギーが関連しているともいわれています。
その他痛み止めの薬(非ステロイド性抗炎症薬:NSAIDS)は、ときに腸に潰瘍を作ることが知られており、腸炎の原因となります。
慢性下痢の原因疾患
潰瘍性大腸炎
大腸の粘膜に潰瘍やびらんをつくる難病のひとつです。
慢性下痢とともに、腹痛や発熱、血便といった症状が現れます。
長期間にわたると、食思不振や体重減少、貧血といった症状を起こします。
また、関節炎や皮膚症状などの、腸以外の全身症状を伴うこともあります。
病気がおこる原因は未だわかっていませんが、腸管粘膜にある免疫担当細胞が過剰な免疫応答をひきおこすことが、発症に関与していると考えられています。
クローン病
潰瘍性大腸炎と同じく難病のひとつですが、大腸だけでなく口から肛門にいたるまで、すべての消化管にびらんや潰瘍ができる病気です。
下痢・腹痛・発熱・血便などの症状があらわれてきます。
痔瘻や腸の狭窄・膿瘍形成などの合併症をひきおこすこともあります。
また、関節炎や皮膚症状など、腸以外の全身の症状を伴うことがあります。
潰瘍性大腸炎と同様、消化管の過剰な免疫応答が原因と考えられていますが、未だ詳細な原因はわかっていません。
過敏性腸症候群
腸に腫瘍や炎症などの疾患が無いにもかかわらず、長期間にわたって便秘や下痢などの症状が持続する状態のことを指します。
生命予後に影響のない病気ですが、日常生活に影響がでる場合もあり、ときに適切な治療を必要とします。
原因はわかっていませんが、脳からのシグナルの影響や、消化管運動異常、知覚過敏が原因といわれています。
下痢が長期間つづくタイプ(下痢型)、便秘が長期間続くタイプ(便秘型)、下痢と便秘を繰り返すタイプ(混合型)、分類不能型の4つに分類されます。
腹痛や不快感、下痢(あるいは便秘)が主な症状であり、血便や発熱を伴うことは少ないといわれています。
診断・検査
急性下痢の場合、感染性腸炎の可能性が高いと考えます。
特に問診や診察で細菌性腸炎をうたがう場合には、血液検査や糞便中の細菌培養検査を行うことがあります。
細菌培養検査は院内でできる比較的簡単な検査で、細長い綿棒をお渡ししますので、肛門付近を軽く拭っていただきます。
慢性下痢の場合、とくに血便や発熱・貧血を伴う場合には、大腸内視鏡検査をおすすめいたします。
状態に応じて、腹部CT検査を行う場合もあります。
治療
急性腸炎のうち、感染性腸炎は多くが安静と十分な水分補給で改善します。
食事がとれない、水分をとることが困難な場合には、点滴を行うこともあります。
症状が重い細菌性腸炎が疑われる場合には、必要に応じて抗生物質を使うことがあります。
薬剤性腸炎は、原因薬物を中止し、必要に応じて特殊な抗生物質を処方することがあります。
慢性下痢については、潰瘍性大腸炎・クローン病などの特殊な病気を除外したのち、症状をコントロールする薬を相談して処方いたします。
当院では、下痢の治療を行っております。
また、下痢症状の検査として、便の細菌培養検査や大腸内視鏡検査も行っています。
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