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痔(じ)は、肛門や直腸周辺の血管や組織に負担がかかり、炎症や腫れが起こる病気の総称です。
日本では成人の約半数が一度は経験するといわれるほど、珍しいものではありません。
しかし、恥ずかしさや「自然に治るだろう」と放置してしまい、症状が悪化することもあります。

 

原因

痔の主な原因は、肛門にかかる負担や血流の悪化です。
長時間の座りっぱなしや立ちっぱなし、便秘や下痢による強いいきみが、肛門周辺の血管に圧力をかけ、炎症や腫れを引き起こします。
特に便秘は、硬い便を出すために強くいきむことで、肛門への負担が増し、痔を悪化させやすくなります。
さらに、過度のアルコールや刺激物の摂取、肥満、妊娠・出産なども原因となります。
また、加齢による筋力の低下も影響しやすい要因です。生活習慣の改善が、痔の予防と悪化防止に重要です。

 

痔の種類

痔には大きく分けて「痔核(いぼ痔)」「裂肛(切れ痔)」「痔瘻(あな痔)」の3種類があります。

痔核(いぼ痔)

肛門の血管がうっ血し、いぼのように腫れる状態です。
長時間の座りっぱなしや便秘、強いいきみが原因となり、肛門の血管に圧力がかかることで発症します。
妊娠・出産や加齢による筋力低下も影響します。

  • 内痔核:肛門の内側にでき、初期は痛みがなく、排便時の出血が主な症状です。進行すると痔核が肛門の外に出てくることがあります。

  • 外痔核:肛門の外側にでき、痛みや腫れ、違和感を伴うことが多いです。

裂肛(切れ痔)

肛門の皮膚が裂けることで起こる疾患です。
主な原因は、硬い便や強いいきみによる肛門への過度な負担です。
特に便秘が続くと、硬い便が肛門を傷つけやすくなります。
また、下痢を繰り返すことで肛門の粘膜が弱まり、裂けやすくなることもあります。
症状としては、排便時の鋭い痛みが特徴です。
傷が浅い初期の段階では、排便時のみに痛みを感じますが、慢性化すると傷が深くなり、排便後も痛みが続くことがあります。
また、トイレットペーパーや便に鮮やかな赤い血が付着することもよくあります。
さらに、傷の修復が進む過程で肛門が狭くなり(狭窄)、より排便しにくくなる悪循環が生じることもあります。

痔瘻(あな痔)

肛門周辺の細菌感染によって膿がたまり、その後、皮膚の外へ通じるトンネル(瘻孔)ができる病気です。
原因の多くは、肛門陰窩(肛門の小さなくぼみ)に細菌が入り込むことです。
感染が進むと肛門周囲に膿がたまり(肛門周囲膿瘍)、膿が自然に排出される際に瘻孔ができ、慢性化すると膿の通り道が固定されてしまいます。
主な症状としては、肛門周囲の腫れや強い痛み、発熱があります。膿が出ると痛みが軽減しますが、治ったわけではなく、再発を繰り返します。放置すると、瘻孔が複雑化し、治療が難しくなることもあります。
痔瘻は自然に治ることはなく、根本的な治療には手術が必要です。

 

症状

痔になると、肛門やその周辺にさまざまな不快な症状が現れます。
痔の種類によって症状は異なりますが、共通して見られるのが痛み・出血・腫れや違和感です。

出血

痔の初期によくみられる症状です。
特に痔核や裂肛では、排便時に鮮やかな赤い血がトイレットペーパーや便に付着することがあります。
大量に出ることはまれですが、出血が続くと貧血につながることもあります。

痛み

裂肛は、排便時に肛門が裂けるため、鋭い痛みを感じます。
傷が深くなると、排便後もしばらく痛みが続くことがあります。
外痔核や痔瘻も痛みが強く、特に血栓ができた場合や化膿した場合は、歩くのもつらくなるほどの痛みになることがあります。

腫れや違和感

いぼ痔では、肛門の内側や外側に腫れができ、違和感や圧迫感を感じることがあります。
進行すると、腫れた部分が肛門の外に飛び出し、戻りにくくなることもあります。
痔瘻では、肛門の周囲が腫れて膿がたまり、熱を持つことがあります。

膿が出る

痔瘻では、肛門の周囲から膿が出ることがあります。
膿がたまると痛みや発熱を伴うことがあり、自然に排出されると痛みが和らぎますが、根本的に治ったわけではなく、放置すると症状が悪化することもあります。

 

検査

痔の診断には、患者さんの症状の聞き取りと肛門の状態を確認する検査が必要です。
基本的な検査は簡単で、痛みも少ないため、安心して受けられます。

問診

まず、医師が症状について詳しく伺います。
出血の有無、痛みの程度、排便時の違和感、腫れや膿の有無などを確認します。
また、便秘や下痢の頻度、生活習慣についても尋ねられます。
出血がある場合は、痔以外の病気(大腸ポリープや大腸がんなど)の可能性も考えるため、便の色や量も重要な情報になります。

視診と触診

実際に肛門の状態を確認するために、視診(見た目のチェック)と触診(指での確認)を行います。
視診では、腫れや出血の有無、いぼ痔(痔核)が外に出ていないかを観察します。
触診では、手袋をつけた指で肛門の内側を軽く触れ、しこりや腫れがないか確認します。
痛みが強い場合は、無理に触診をせず、他の検査を検討することもあります。

肛門鏡検査

肛門の奥の状態を詳しく見るために、肛門鏡という小さな筒状の器具を使います。
これにより、内痔核(肛門内のいぼ痔)の有無や状態を確認できます。
痛みはほとんどなく、短時間で終わる検査です。

大腸内視鏡検査

痔と似た症状を示す病気(大腸がんや炎症性腸疾患など)を除外するために、必要に応じて大腸内視鏡検査を行います。
特に、便に血が混じる場合や、50歳以上の方では、大腸の病気を調べることが推奨されます。

大腸内視鏡についてはこちら

治療方法

痔の治療は、症状の程度によって異なります。
基本的には生活習慣の改善や薬の使用で治療を行い、重症の場合は手術が必要になることもあります。

生活習慣の改善

痔の原因となる便秘や下痢を防ぐため、食物繊維を多く含む食事(野菜、果物、海藻など)や十分な水分を摂ることが大切です。
また、長時間の座りっぱなしを避け、適度に体を動かすことで血流をよくすることも重要です。
トイレでの長時間のいきみは肛門に負担をかけるため、短時間で済ませるようにしましょう。

薬による治療

軽症の痔には、塗り薬や座薬、飲み薬を使います。
炎症や腫れを抑える薬、痛みを和らげる薬、血流を改善する薬などがあります。
便を柔らかくする薬も、排便時の負担を減らすために有効です。

手術による治療

薬で改善しない重症の痔(出血が続く、いぼ痔が戻らない、痔瘻があるなど)には、手術が必要になります。
いぼ痔にはゴム輪結紮(ごむわけっさつ)療法(ゴムで縛って自然に取れるようにする方法)や切除手術があります。
痔瘻の場合は、トンネル状になった部分を取り除く手術が行われます。

 

受診のタイミング

以下のような場合は、放置せずに早めに受診しましょう。

・出血が続く、または大量に出る。
・痛みが強く、日常生活に支障がある。
・肛門の腫れやしこりが気になる。
・排便時に強い違和感や出血がある。

 

痔は多くの人が経験する身近な病気ですが、適切な治療や生活習慣の改善で改善が可能です。
「恥ずかしい」と思わず、少しでも気になる症状があれば、早めに医師に相談しましょう。
当クリニックでは、痔に対する診察(肛門鏡検査や大腸内視鏡検査)、生活習慣指導および投薬治療をおこなっています。
もしも手術が必要になる場合には、適切な医療機関へご紹介させていただきます。
患者さん一人ひとりの症状に合わせた治療をご提案し、快適な生活を取り戻すお手伝いをいたします。


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