鼻からの胃カメラは痛い?経口内視鏡との違いを解説
「胃カメラは痛くて苦しいもの」——。あなたも、そんなイメージから検査を受けることに強い抵抗を感じていませんか?過去につらい経験をされた方なら、なおさらかもしれません。しかし、直径わずか5〜6mm、うどん一本ほどの細さのスコープを使う鼻からの胃カメラであれば、多くの方が苦しむ強い嘔吐反射が軽くなるかもしれません。
この記事では、なぜ鼻からの胃カメラは楽なのか、口からの検査との違いは何か、痛みを和らげるための麻酔方法についても詳しく解説します。
鼻からの胃カメラで感じる痛みの種類と程度
過去の検査でつらい経験をされた方にとっては、仕方のないことかもしれません。鼻から入れる胃カメラ(経鼻内視鏡検査)は、そんな胃カメラのつらさを少しでも和らげるために開発された方法です。
実際にどんな感覚なのか、検査の流れに沿って一つひとつ具体的にお話ししていきますので、ぜひ検査を受ける前の参考にしてみてくださいね。
鼻の穴をスコープが通るときの痛み
鼻からの胃カメラでは、まず鼻の穴に細いカメラを入れていきます。この時、激しい痛みというよりは、「ツンとする感じ」や、少し押されるような圧迫感を覚える方が多いようです。
というのも、使用するスコープは直径5〜6mmほど。例えるなら、うどん一本くらいの太さしかありません。
ただ、鼻の中の通り道(鼻腔)の広さや形は人それぞれです。アレルギー性鼻炎で粘膜が腫れていたり、鼻の骨が曲がっていたりすると、少し痛みを感じやすい傾向はあります。
もちろん検査の前には鼻の通りを良くするお薬を使ったり、ゼリー状の麻酔をしっかり効かせたりと、できるだけスムーズにスコープが通るように準備をします。
それでも、鼻の粘膜はとてもデリケートで細かい血管が集まっているので、器具がこすれることで、まれに鼻血が出てしまうことも。
実は、鎮静剤で眠っている間に行う別の内視鏡検査でも、呼吸を助けるために鼻からチューブを入れることがありますが、その際にも鼻血は副作用として報告されています。それだけ鼻の中は繊細な場所だということですね。
喉をスコープが通過するときの違和感
多くの方が胃カメラで最もつらいと感じるのが、喉を通るときの「オエッ」となる感覚ではないでしょうか。これは嘔吐反射(おうとはんしゃ)といい、スコープが舌の付け根にある、とても敏感な部分に触れてしまうことで起こります。
その点、鼻からの胃カメラは、スコープが舌の付け根に触れることなく、鼻の奥から喉へと直接進んでいきます。だから、口からの検査と比べて、この嘔吐反射が起こりにくいのです。
喉を通る瞬間は、「何か固いものが通っていくな」という感じや、「少し飲み込みにくいな」と感じるかもしれませんが、この「オエッ」となりにくいことこそ、鼻からの胃カメラが選ばれる大きな理由の一つでしょう。
口からの胃カメラとの違いは?痛みと嘔吐反射を徹底比較
胃カメラとひとくちに言っても、カメラを口から入れるか、鼻から入れるかで、検査中の感覚は大きく変わってきます。
特に、多くの方が胃カメラに対して苦手意識を持つ原因である「オエッ」という強い吐き気。これが、鼻からの胃カメラでは起こりにくいのが最大の違いと言えるでしょう。
なぜ吐き気が起こりにくいのか、痛みはどうなのか、口からの胃カメラと比較しながら、その仕組みを一つひとつ見ていきましょう。
「オエッ」となりにくい経鼻内視鏡の仕組み
胃カメラでつらいと感じる「オエッ」という吐き気は、嘔吐反射という、身体を守るための自然な反応です。
歯磨き中にブラシが喉の奥に当たった時、思わず吐きそうになるのと同じ仕組みですね。これは、私たちの舌の付け根あたりが非常に敏感で、異物が触れると「何かを吐き出さなければ!」と身体が反応するために起こります。
口からの胃カメラでは、この敏感なエリアをどうしてもスコープが通過しなければなりません。
それに対して、鼻からの胃カメラは、スコープが舌の付け根に触れることなく、鼻の奥から食道へと直接アプローチできます。敏感な部分を避けて通れるので、あの苦しい嘔吐反射が格段に起こりにくくなる、というわけです。
検査中に医師と会話できるメリットとは
鼻からカメラを入れる検査では、お口が自由になるのも大きなポイントです。つまり、検査中でも医師やスタッフと普通に話すことができるんですよ。
「今、どのあたりを見ていますか?」
「ちょっとお腹が張る感じがします」
このように、気になったことをその場で質問したり、感じたことをすぐに伝えられたりします。何が起きているかわからないまま検査が進むのではなく、モニターを一緒に見ながら「ここが胃の入り口ですよ」「ポリープなどもなく、きれいですね」といった説明を受けることもできます。
コミュニケーションが取れることで、検査に対する不安が和らぎ、リラックスして受けていただきやすくなります。
診断精度は変わる?スコープの細さと画質について
「鼻に入れるカメラは細いみたいだけど、ちゃんと病気が見つかるの?」これは、多くの方が心配される点だと思います。
確かに、鼻から入れるスコープは直径5〜6mmほどで、うどん一本くらいの太さ。口からのスコープ(直径約10mm)と比べると細身です。
ですが、技術の進歩はすばらしく、現在の内視鏡は非常に高性能。細いスコープでもハイビジョン対応の高画質なカメラが搭載されており、食道や胃の粘膜をすみずみまで鮮明に観察できます。そのため、一般的な健康診断や診察の範囲であれば、診断の質に大きな違いはないと考えていただいて大丈夫です。
また、診断の正確さだけでなく、いかに安全に検査を受けていただくかという点も非常に重要です。
例えば、鎮静剤を使ってウトウトしながら検査を受ける場合、呼吸が浅くなることがあります。鎮静剤を使用する際は、呼吸の状態を安定させるために、酸素を供給するチューブを用いるなど、安全性を高めるための様々な工夫が行われています。
痛みを最小限にするための麻酔・鎮静剤の選択肢
さらに、どうしても不安が強い、過去の検査がトラウマになっているという方には、ウトウトとリラックスした状態で検査を受けられる鎮静剤という選択肢もあります。ご自身の気持ちや体調に合わせて、最適な方法を一緒に考えていきましょう。
鼻の痛みを和らげる前処置(局所麻酔)の流れ
鼻からの胃カメラで、スコープが鼻を通るときのツンとした感覚を和らげるために、検査前には前処置という準備を丁寧に行います。鼻の粘膜に直接作用する局所麻酔を使うもので、おおまかには次のような流れです。
-
鼻の通りを良くするスプレー
まず、両方の鼻に血管をキュッと縮める作用のあるお薬をスプレーします。鼻の中の通り道が広がり、この後のスコープがスムーズに入りやすくなるための準備ですね。 -
ゼリー状の麻酔薬を注入
次に、チューブのついた注射器の筒のような器具を使って、ドロッとしたゼリー状の麻酔薬を鼻の中にゆっくりと流し込みます。痛み止めの成分が粘膜の感覚を鈍らせてくれるので、スコープが通るときの違和感や痛みをグッと抑えてくれるでしょう。 -
麻酔が効くまで少し待機
お薬が鼻の奥までしっかり行き渡り、効果が出るまで5分〜10分ほどお待ちいただきます。
このひと手間をしっかりとかけることで、検査中の負担が大きく変わってきます。
不安が強い方へ「眠ったまま」で受けられる鎮静剤
「以前の胃カメラが苦しくて、もう二度とやりたくない」
「痛いのが本当に苦手で、想像するだけで緊張してしまう」
そんなふうに検査に対する不安が特に強い方には、鎮静剤を使う方法をおすすめしています。
点滴から鎮静剤を少しずつ入れていくと、だんだんウトウトと眠くなり、ぼんやりとリラックスした状態になります。痛みや苦しさをほとんど感じることなく、「気づいたら検査が終わっていた」という方がほとんどですよ。
もちろん、鎮静剤を使うからには、安全が第一です。鎮静剤を使うと、どうしても少し呼吸が浅くなる傾向があります。検査中は血圧や呼吸の状態、血中の酸素濃度などを常にチェックし、万が一に備えた体制を整えています。
特に、鎮静中に呼吸が不安定になりやすい方に対しても、こうした器具を用いることで、より安全に検査を受けていただけるよう配慮しています。
このように、より安心して検査を受けていただくための技術も日々進歩しています。
鎮静剤使用後に注意すべきこと(車の運転など)
鎮静剤を使ってとても楽に検査を受けられる、という大きなメリットがある一方、検査が終わった後にはいくつか注意していただきたい点があります。安全に一日を終えるために、とても大切なことなので、ぜひ覚えておいてくださいね。
-
当日の乗り物の運転は絶対にできません
鎮静剤の影響で、検査後もしばらくは眠気が残ったり、判断力が鈍ったりすることがあります。ご自身での車、バイク、自転車の運転は思わぬ事故につながる可能性があり大変危険です。 -
検査後は院内でしっかりお休みいただきます
検査が終わった後、ストレッチャーやリクライニングチェアなどで30分から1時間ほど、ゆっくりお休みいただきます。意識がはっきりして、ふらつきなどがなくなるまでスタッフがすぐそばで見守りますので、ご安心ください。 -
重要な判断や精密な作業は避けましょう
検査当日は、集中力を必要とするお仕事や、大切な契約ごとなどは避けるようにしてください。
ご帰宅の際は、電車やバスといった公共交通機関をご利用になるか、ご家族の方に送迎をお願いするとより安心ですね。
こんな場合はどうする?鼻からの胃カメラに関するQ&A
鼻からの胃カメラについて色々と調べていると、「自分の場合はどうなんだろう?」と、かえって疑問や不安が大きくなってしまうこともありますよね。
特に、もともと鼻に症状がある方や、検査が終わった後のことが気になる方もいらっしゃるかもしれません。ここでは、患者さんからよくいただくご質問に一つひとつお答えしていきます。
鼻炎や鼻中隔彎曲症でも検査は可能か
アレルギー性鼻炎や花粉症、鼻中隔彎曲症をお持ちの方でも、多くの場合、鼻からの胃カメラ検査を受けていただけますよ。
鼻中隔彎曲症とは、左右の鼻の穴を仕切っている壁が、どちらかに曲がっている状態のことですね。
検査の前には、どちらの鼻の通りがスムーズか丁寧に確認し、スコープが入りやすい方から挿入します。鼻の粘膜の腫れを和らげるお薬も使いますので、多くの方は問題なく検査を終えられます。
ただし、鼻の曲がり具合がとても強かったり、鼻炎の症状が重かったりして、どうしてもスコープが通りにくいと判断することもあります。その場合は、決して無理に挿入したりはしません。患者さんの安全を第一に考え、お口からの検査に変更することをご提案しますので、ご安心くださいね。
検査後に鼻血や喉の痛みが続く場合の対処法
検査が終わった後に、少し鼻血が出たり、喉にイガイガした違和感があったりすることがありますが、そのほとんどは一時的なものです。あまり心配しすぎなくても大丈夫ですよ。
スコープが鼻の粘膜にこすれることで、ティッシュに少し付く程度の鼻血が出ることがあります。たいていは数分で自然に止まりますので、落ち着いて軽く鼻を押さえてください。
実は、鎮静剤を使った検査の際に、安全な呼吸を確保するための特殊なチューブを鼻に留置することがあります。こうした安全対策のための器具が、まれに鼻出血の原因となることも報告されていますが、ほとんどが軽度のものです。
もし、30分以上も鼻血が止まらない、痛みがどんどん強くなるといった場合は、何か別の原因も考えられますので、すぐにクリニックへご連絡ください。
経鼻から経口へ検査方法が変更になるケース
当日の鼻の状態によっては、患者さんの安全と検査の正確性を最優先するために、鼻からの胃カメラを予定していても、お口からの検査に変更させていただくことがあります。
変更をご提案するのは、主に次のような場合です。
- 鼻の中の通り道が、スコープの太さよりも明らかに狭い場合
- アレルギーなどで、鼻の粘膜がひどく腫れている場合
- スコープを入れた際に、出血のリスクが高いと判断された場合
例えば、鎮静剤を使う検査では、いかに安全な呼吸を保てるかが非常に重要です。そのための様々な工夫が日々研究されていますが、そもそも鼻の通り道が極端に狭いと、かえって患者さんのご負担になりかねません。
このような観点から、無理に鼻からの挿入は行わないのです。もちろん、変更する際には必ずご本人にご説明し、ご納得いただいてから行いますので、ご安心くださいね。
まとめ
今回は、鼻からの胃カメラで感じる痛みや、口からの検査との違いについて詳しく解説しました。
「胃カメラは苦しいもの」というイメージがあるかもしれませんが、技術の進歩により、今は嘔吐反射の少ない鼻からの検査や、ウトウト眠ったまま受けられる鎮静剤など、ご自身に合った楽な方法を選べる時代になっています。
検査の一番の目的は、あなたの健康を守ることです。胃の不調が気になりながらも検査をためらっていたり、健診を先延ばしにしていたりする方は、どうか一人で悩まず、まずは専門のクリニックに相談してみてくださいね。不安な気持ちに寄り添い、最適な方法を一緒に考えます。
参考文献
- Guo M, Lu J, Li B, Hu L and Bo L. "Comparative efficacy of modified nasopharyngeal airway and nasal cannula for oxygenation in deeply sedated patients undergoing endoscopic retrograde cholangiopancreatography: a randomized controlled trial." BMC anesthesiology 26, no. 1 (2025): 102.
- Liang X, Liu J, Wang W, Cao Q, Zhu G, Gu Z, Zhou M, Zou Z and Han C. "Comparison of NaPSflex and standard nasal cannula during sedation for gastrointestinal endoscopy in obese patients: a randomized cohort trial." International journal of surgery (London, England) 112, no. 2 (2026): 3474-3482.
