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健康診断で肝機能障害といわれたら?脂肪肝(MASLD)対策を専門医が解説

[2026.02.28]

健康診断の結果に並ぶ「肝機能障害」や「脂肪肝」の文字。思わず目を背けたくなった方もいるかもしれません。しかし肝臓は沈黙の臓器とも呼ばれており、症状がないからと放置するのは最も危険な落とし穴です。実は近年、MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)という名に変わり、全身の代謝異常が関わる病気だと明確に位置づけられました。

放置すれば肝硬変や肝がん、さらには心筋梗塞などの他臓器疾患リスクも高まるといわれています。ですが、脂肪肝は生活習慣の見直しで改善できる病気です。この記事では、日本肝臓学会も警鐘を鳴らす「ALT値30超」の意味から、食事や運動の具体的な対策までを専門医が徹底解説します。未来の健康を守る第一歩を、ここから始めましょう。

健康診断の数値と脂肪肝の基礎知識

健康診断の結果表に並ぶ「肝機能障害」や「脂肪肝」の文字。肝臓はダメージを受けてもなかなかSOSを出さない我慢強い臓器です。だからこそ、健康診断は肝臓からの貴重なメッセージを受け取る絶好の機会なのです。

ここでは、ご自身の体の状態を正しく知る第一歩として、健康診断の数値の見方から脂肪肝の基礎知識までを詳しく解説します。

AST(GOT), ALT(GPT), γ-GTPは何を示す?基準値と異常値の意味

健康診断で目にするAST、ALT、γ-GTPは、肝臓の状態を教えてくれる大切な手がかりです。これらは肝臓の細胞の中にある酵素で、本来は血液中にはごく少量しか存在しません。数値が高いということは、肝臓の細胞が壊れることで中の酵素が血液に漏れ出しているサインです。

検査項目 正式名称 どんな酵素?
AST アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ 肝臓だけでなく、心臓の筋肉や赤血球にも含まれます。そのため、肝臓以外の臓器のトラブルでも数値が上がることがあります。
ALT アラニンアミノトランスフェラーゼ ほとんどが肝臓の細胞に含まれる酵素です。この数値が高い場合、肝臓に何らかのダメージが起きている可能性が高いと判断できます。
γ-GTP γ-グルタミルトランスペプチダーゼ アルコールや脂肪肝の影響で高くなることで有名です。しかし、胆管の細胞が壊れたり、胆汁の流れが悪くなったりしても上昇します。

特に注目していただきたいのがALT(GOT)の値です。日本肝臓学会などが提唱する「奈良宣言」では、ALTが30 IU/Lを超えた場合を肝臓病発見のサインと位置づけています。これは、かかりつけ医に相談すべき重要な基準値です。健康診断の基準値内でも、30を超えていたら一度専門医に相談することをおすすめしています。

「脂肪肝」とは?新しい呼び名「MASLD」との違いをわかりやすく解説

脂肪肝とは、その名の通り肝臓に脂肪が溜まった状態です。食事で摂りすぎた糖質や脂質がエネルギーとして使い切れず、脂肪となって肝臓の細胞の5%以上に蓄積したものを指します。

これまで、お酒をあまり飲まない方の脂肪肝は「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」と呼ばれてきました。しかし、2023年に国際的な学会で新しい呼び名に変更されました。

  • 新しい呼び名:MASLD
    • 正式名称は「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患」です。
    • 肥満や糖尿病、脂質異常症、高血圧といった代謝の異常(メタボリックシンドローム)が深く関わっていることを明確にした名称です。

この名称変更は、脂肪肝が単に肝臓だけの問題ではなく、全身の代謝異常と密接に関連する病気であることを示すために行われました。最近では、アルコールとMASLDの両方の原因が重なるMetALD(代謝機能障害アルコール関連肝疾患)という分類も登場し、より個々の状態に合わせた診断や治療を目指す動きが活発になっています。

症状がないのに放置は危険?肝硬変・肝がんへ進行するリスク

脂肪肝には自覚症状がほとんどありません。そのため「症状がないから大丈夫」と軽く考えてしまうのが、最も危険な落とし穴です。肝臓に脂肪が溜まり続けると、一部の方で肝臓に炎症が起こり、MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)という、より深刻な状態へ進行します。

MASHになると、肝臓の細胞が壊れては修復されるという過程を繰り返します。この過程をくりかえすことで、肝臓はどんどん硬く小さくなっていきます。この状態が肝硬変です。

  1. MASLD(脂肪肝)
    • 肝臓に脂肪が溜まっているだけの状態です。
  2. MASH(脂肪肝炎)
    • 脂肪に加え、炎症や細胞の破壊が起きています。
  3. 線維化
    • 炎症を繰り返すことで、肝臓が硬くなり始めます。
  4. 肝硬変
    • 肝臓全体が硬くなり、機能が著しく低下します。
  5. 肝がん
    • 肝硬変になると、高い確率で肝がんが発生します。

さらに、近年の研究では、MASLDが肝臓だけの問題ではないことが明らかになっています。MASLDの方は、心筋梗塞や脳卒中といった心血管系の病気や、糖尿病による死亡リスクも高まることが報告されています。症状がない今だからこそ、生活を見直すことが、未来の深刻な病気を防ぐための最大のチャンスなのです。

アルコール性肝障害との見分け方

脂肪肝の原因が、お酒の飲み過ぎによるアルコール性肝障害なのか、それ以外のMASLDなのかは、純粋なアルコールの摂取量で区別されます。

MASLDと診断される飲酒量の目安

  • 男性
    • 1日あたり30g未満
  • 女性
    • 1日あたり20g未満

この基準を超える飲酒習慣がある場合は、アルコールが肝臓ダメージの主な原因と考えられます。具体的にどれくらいのお酒がこの量に相当するのか、下の表で確認してみましょう。

お酒の種類 目安量 純アルコール量(約)
ビール(5%) 中びん1本(500mL) 20g
日本酒(15%) 1合(180mL) 22g
ワイン(12%) グラス2杯弱(200mL) 19g
ウイスキー(43%) ダブル1杯(60mL) 21g

特に女性は、ビール中びん1本でMASLDの基準を超えてしまいます。ご自身の飲酒習慣を振り返り、もし基準を超えているようであれば、まずはお酒の量を減らすことから始めましょう。もし基準以下の飲酒量で脂肪肝を指摘された場合は、MASLDの可能性が高いと考えられます。

肝機能の数値を下げるための具体的な方法

健康診断で肝臓の数値を指摘されると、心配になりますよね。しかし、ご安心ください。MASLDは、日々の生活習慣を見直すことで改善が期待できる病気です。肝臓はダメージから回復する力が強い臓器でもあります。

大切なのは、自分の肝臓に負担をかけていた原因を知り、正しい対策を始めることです。ここでは、今日から実践できる具体的な方法を「食事」「運動」「お酒」「痩せ型の方の対策」の4つのポイントに分けて、専門医の視点から詳しく解説します。

食事療法の基本。何を減らし、何を食べればいいのか

脂肪肝を改善するための脂肪肝を改善するための食事で大切なのは、エネルギーの摂りすぎ、特に糖質と脂質のコントロールです。これらが肝臓で中性脂肪に変わり、蓄積してしまうのを防ぎます。

まずは現在の体重から3%減らすことを目標にしましょう。急激な減量は体に負担をかけるため、ゆっくり着実に行うことが大切です。

【特に減らしてほしいもの】

  • 糖質の多い食べ物・飲み物
    • ご飯やパン・麺類などの主食は、量を少し減らす意識が大切です。お菓子やジュースに含まれる砂糖だけでなく、特に果物に含まれる果糖は、肝臓で直接脂肪になりやすいため注意が必要です。ビタミン補給のつもりが、肝臓の負担になっている可能性もあります。
  • 脂質の多い食べ物
    • 揚げ物や脂身の多いお肉・バター・生クリームなどを控えましょう。これらに含まれる飽和脂肪酸は、摂りすぎると肝臓に脂肪がたまりやすくなります。スナック菓子やインスタント食品などの加工食品にも多く含まれています。

【積極的に食べてほしいもの】

  • 食物繊維が豊富な食材
    • 野菜、きのこ、海藻類を食事の最初に食べる「ベジタブルファースト」を試しましょう。糖の吸収を穏やかにし、血糖値の急上昇を抑える効果があります。また、満腹感を得やすくなり、食べ過ぎ防止にもつながります。
  • 良質なたんぱく質
    • 筋肉は糖を消費してくれる大切な臓器です。その材料となるたんぱく質が不足しないよう、魚(特にDHA・EPAが豊富な青魚)・大豆製品・鶏むね肉などを積極的に食事に取り入れましょう。
食事改善のポイント 具体的なアクションプラン
糖質の質を変える 白米を玄米に、食パンを全粒粉パンに変える。
食べる順番を工夫する 野菜・きのこ類→肉・魚→ごはんの順番で食べる。
間食を見直す 甘いジュースをお茶や水に、お菓子をナッツや無糖ヨーグルトに変える。
調理法を工夫する 「揚げる」から「蒸す・茹でる」に変えるだけでも脂質をカットできる。

効果的な運動療法のコツ。おすすめの運動と続けるための工夫

食事改善と車の両輪になるのが運動療法です。運動は、摂取したエネルギーを消費して肝臓の脂肪を直接減らすだけでなく、筋肉を増やすことで根本的に脂肪がつきにくい体質へと変えてくれます。

実は、筋肉は「第二の肝臓」とも呼ばれるほど、糖の代謝に重要な役割を果たしています。全身で使われる糖質のうち約7割は筋肉で消費されるため、筋肉量を増やすことは脂肪肝改善に直結するのです。

【おすすめの運動メニュー】

  • 有酸素運動
    • ウォーキング・軽いジョギング・サイクリング・水泳などが代表的です。少し息が弾み、「楽だけど、ちょっとキツい」と感じるくらいの強度が効果的です。
  • レジスタンス運動(筋トレ)
    • スクワットや腕立て伏せなど、筋肉に負荷をかける運動です。大きな筋肉を鍛えることで、効率よく糖を消費できます。

近年の研究では、中強度の有酸素運動を週に合計150分以上行うと、体重が減らなくても肝臓の脂肪が減少することが報告されています。

無理なく運動を続けるための工夫
1.日常生活に組み込む
・エレベーターではなく階段を使う
・一駅手前で降りて歩く
・テレビを見ながらその場で足踏みをする
2.楽しさを見つける
・好きな音楽やラジオを聴きながら歩く
・家族や友人を誘って一緒に運動する
3.成果を「見える化」する
・歩数計アプリやスマートウォッチを活用する
・カレンダーに運動した日を記録する

膝や腰に痛みがある方は、無理は禁物です。椅子に座ったままできる足上げ運動など、ご自身の体調に合わせてできることから始めましょう。

お酒は完全にやめるべき?許容される量と上手な付き合い方

肝機能の数値が気になる方にとって、お酒との付き合い方は非常に重要な問題です。アルコールは分解される過程で中性脂肪の合成を促し、肝臓にさらなる負担をかけます。

国際的な診療ガイドラインでも、脂肪肝(MASLD)と診断された場合はアルコールの摂取を控えることが強く推奨されています。理想は禁酒ですが、難しい場合はまず節酒から始めましょう。

【もし飲む場合の許容量の目安】

  • 男性
    • 1日あたり純アルコール量30g未満
  • 女性
    • 1日あたり純アルコール量20g未満

女性は男性よりもアルコールの影響を受けやすいため、基準が厳しくなっています。下の表でご自身の飲酒量が基準を超えていないか確認してみてください。

お酒の種類(度数) 純アルコール量20gの目安
ビール(5%) 中びん1本(500ml)
日本酒(15%) 約0.8合(約150ml)
ワイン(12%) グラス2杯弱(約200ml)
ウイスキー(43%) ダブル1杯(60ml)

【肝臓をいたわるお酒の飲み方】

  1. 週に2日以上の休肝日を設ける
    • 毎日飲む習慣がある方は、まずお酒を飲まない日を作り、肝臓を休ませてあげましょう。
  2. 食事と一緒に楽しむ
    • 空腹時の飲酒はアルコールの吸収が速く、肝臓への負担が大きくなります。必ず食事と一緒にとりましょう。
  3. 強いお酒は薄めて飲む
    • 焼酎やウイスキーは、水やお茶などで割ることで飲むペースがゆっくりになり、結果的にアルコールの総量を減らせます。

ご自身の状態によって適切な飲酒量は異なります。必ず主治医と相談し、その指導に従うようにしてください。

痩せているのに脂肪肝と診断された方のための特別対策

「脂肪肝は太っている人の病気」と思われがちですが、実は痩せている方でも脂肪肝と診断されることは珍しくありません。特に日本人は、肥満でなくても脂肪肝になりやすい遺伝的体質を持つ方が比較的多いことがわかっています。

【痩せ型脂肪肝の主な原因】

  • 糖質の摂りすぎ
    • 体重は標準でも、お菓子・ジュース・果物を頻繁に摂る食生活では、余った糖が肝臓で脂肪に変わります。
  • 筋肉量の不足
    • 運動不足により筋肉量が少なく、体脂肪率が高い「隠れ肥満」の状態です。糖を消費する筋肉が少ないため、肝臓に負担がかかりやすくなります。
  • 極端なダイエット
    • 食事を抜くなどの無理なダイエットは、筋肉のもとになるたんぱく質や、肝臓が働くために必要なビタミン・ミネラルが不足し、かえって肝臓の機能を低下させます。

【痩せ型の方が特に意識すべき対策】

  1. 食事の「量」より「質」を見直す
    • カロリーを気にするあまり、食事を減らしすぎていませんか。筋肉を維持するために、魚・大豆製品・赤身肉などの良質なたんぱく質を毎食しっかり摂ることが重要です。
  2. 筋力トレーニングを習慣にする
    • 有酸素運動に加えて、スクワットなど下半身の大きな筋肉を鍛える筋トレを取り入れましょう。筋肉量を増やして、基礎代謝を高めることが改善への近道です。
  3. 糖質の「質」を選ぶ
    • 同じ糖質でも、血糖値を急激に上げる白米や菓子パンより、吸収が穏やかな玄米や全粒粉パンなどを選ぶように心がけましょう。

専門医による検査と治療の流れ

健康診断で肝臓の数値を指摘されると、「これからどうなるのだろう」と不安に思うかもしれません。専門のクリニックを受診し、ご自身の肝臓の状態を正しく把握することが、改善への大切な第一歩です。

ここからは、クリニックでどのような検査を行い、どのような流れで治療を進めていくのかを具体的に解説します。ご自身の状態を知り、納得して治療に取り組むためにも、ぜひ参考にしてください。

クリニックで行う詳しい検査。腹部エコーや血液検査で何がわかる?

クリニックではまず、詳しい問診と診察を行います。その上で、体に負担の少ない検査から段階的に進めていくのが一般的です。

  • 腹部超音波(エコー)検査

    • お腹にゼリーを塗り、超音波の出る機械をあてて肝臓を直接観察します。痛みは全くありません。脂肪がたまった肝臓は、正常な肝臓より白く輝いて見えます。また、超音波が奥まで届きにくくなるのも特徴です。この検査で、脂肪肝の有無やその程度を評価します。
  • 肝臓の硬さを測る検査(エラストグラフィ)※当院は未採用です。

    • 最近では、エコーの技術を応用して肝臓の硬さ、つまり線維化の進み具合を数値で測定できる装置があります。肝臓が硬くなるほど、肝硬変や肝がんのリスクは高まります。この検査は、体に針を刺すことなく、肝生検(組織を採取する検査)に近い精度で肝臓の状態を評価できるため、非常に有用です。
  • 血液検査

    • 健康診断の項目に加え、肝臓の線維化リスクをより詳しく評価します。
    • FIB-4 index(フィブフォー インデックス)
      • 年齢、AST、ALT、血小板の数から計算する指標です。この数値が1.3以上の場合、線維化が進んでいる可能性があるため、より詳しい検査を検討します。
    • 肝線維化マーカー
      • 4型コラーゲン7S・M2BPGiなど、肝臓の線維化が進むと血液中に増える特殊な物質を測定し、より正確に肝臓の状態を把握します。

国際的なガイドラインでも、まず血液検査(FIB-4 indexなど)でリスクを評価し、次に画像検査(エラストグラフィなど)へ進むという段階的なアプローチが推奨されています。これらの検査で異常が続く場合や、より正確な診断が必要な場合には肝臓の組織を一部採取する肝生検を検討します。

薬物治療が必要になるのはどんな場合?処方される薬の種類と効果

MASLD治療の基本は、あくまで食事と運動です。しかし、生活習慣の改善を続けても効果が不十分な場合や、すでにMASHや線維化が進んでいる場合には、お薬の力を借りて治療を進めます。

残念ながら、現時点でMASLDそのものに特化した特効薬で、保険適用となっているものはありません。しかし、MASLDと合併しやすい他の生活習慣病の治療薬が、肝臓の状態を良くすることが数多くの研究でわかっています。

  • 糖尿病の治療薬
    • 一部の糖尿病治療薬(GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬など)には、血糖値を下げる効果に加え、体重を減らし、肝臓の脂肪や炎症を抑える働きが報告されています。ただし、これらの薬は現状糖尿病をお持ちの方にしか処方できません。
  • 脂質異常症の治療薬
    • 血液中の悪玉コレステロールや中性脂肪を下げるお薬は、肝臓への脂肪の蓄積を抑える助けになります。
  • 高血圧の治療薬
    • 一部の血圧のお薬には、肝臓の線維化が進むのを抑える効果が期待できるものがあります。
  • ビタミンE
    • 強い抗酸化作用があり、肝臓の細胞がダメージを受けるのを防ぎ、炎症を抑える目的で使われることがあります。

また、世界では研究が進み、線維化を伴うMASHに対する新しい治療薬も登場してきています。

治療にかかる期間の目安と費用。保険適用の範囲について

脂肪肝の治療は、マラソンのような長期的な取り組みです。すぐに結果を求めるのではなく、焦らず着実に生活習慣を改善していくことが何よりも大切です。

治療期間の目安
MASLDの自然な経過は非常に複雑で、数年から数十年という長い年月をかけてゆっくりと進行することがあります。だからこそ、根気強く治療を続けることが、将来の肝硬変や肝がんを防ぐための鍵となります。

  • 初期目標(3〜6ヶ月)
    • まずは現在の体重から3〜5%の減量を目指します。これだけでも血液検査の数値に改善が見られることが多いです。
  • 最終目標
    • 体重を7〜10%減らすことができれば、肝臓の脂肪や炎症が大きく改善することが期待できます。

費用の目安と保険適用
クリニックでの検査や治療は、基本的に健康保険が適用されます。

項目 内容 自己負担額の目安(3割負担)
初診 診察、血液検査、腹部エコーなど 5,000円〜10,000円程度
再診 診察、経過観察の血液検査など 2,000円〜5,000円程度
薬代 処方される薬の種類や量による 月々1,000円〜数千円程度

※上記はあくまで目安です。検査や治療内容によって変動しますので、詳しくは受診する医療機関にご確認ください。

糖尿病や脂質異常症など他の生活習慣病との関連と同時治療

MASLDは、「代謝機能障害関連」という名前が示すように、決して肝臓だけの病気ではありません。肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧といった生活習慣病と深く結びついており、いわば全身の代謝異常を映す鏡なのです。

  • MASLDと生活習慣病の深い関係
    • MASLDの患者さんの約半数が糖尿病を合併しています。
    • 2型糖尿病の方は、そうでない方と比べて線維化が進んだMASLDであるリスクが2倍以上高いことが報告されています。
    • 脂質異常症は約50%、高血圧は約30〜50%の患者さんで見られます。

最も重要なことは、MASLDの患者さんの命に最も関わる原因は、肝臓の病気ではなく、心筋梗塞や脳卒中といった心血管系の病気であるという事実です。脂肪肝を放置することは、肝臓だけでなく、全身の血管にダメージを与え、動脈硬化を進行させてしまうのです。

そのため、MASLDの治療は、糖尿病や脂質異常症、高血圧の治療と同時に進めることが極めて重要です。血糖値やコレステロール、血圧を適切に管理することは、肝臓を守るだけでなく、あなたの未来の心臓や脳を守ることに直結するのです。かかりつけ医としっかり連携しながら、全身の健康管理に取り組んでいきましょう。

まとめ

今回は、健康診断で肝機能障害を指摘された方へ、MASLDの基礎知識から具体的な対策まで詳しく解説しました。

「沈黙の臓器」からのサインは、健康診断でしか気づけない貴重なメッセージです。脂肪肝は、放置すれば肝硬変や肝がん、さらには心筋梗塞のリスクも高まる怖い病気ですが、決して手遅れではありません。あなたの体は、まだ間に合うという大切なサインを送ってくれているのです。

食事や運動など、今日からできる生活習慣の見直しで肝臓はきちんと応えてくれます。大切なのは、一人で抱え込まず、まずは専門医に相談してご自身の状態を正しく知ること。それが、未来の健康を守るための大切な第一歩になります。

参考文献

  1. Chen Q, Hu P, Hou X, Sun Y, Jiao M, Peng L, Dai Z, Yin X, Liu R, Li Y and Zhu C. "Association between triglyceride-glucose related indices and mortality among individuals with non-alcoholic fatty liver disease or metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease." Cardiovascular diabetology 23, no. 1 (2024): 232.
  2. Abdelhameed F, Kite C, Lagojda L, Dallaway A, Chatha KK, Chaggar SS, Dalamaga M, Kassi E, Kyrou I and Randeva HS. "Non-invasive Scores and Serum Biomarkers for Fatty Liver in the Era of Metabolic Dysfunction-associated Steatotic Liver Disease (MASLD): A Comprehensive Review From NAFLD to MAFLD and MASLD." Current obesity reports 13, no. 3 (2024): 510-531.
  3. Israelsen M, Francque S, Tsochatzis EA and Krag A. "Steatotic liver disease." Lancet (London, England) 404, no. 10464 (2024): 1761-1778.
  4. Hagström H, Shang Y, Hegmar H and Nasr P. "Natural history and progression of metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease." The lancet. Gastroenterology & hepatology 9, no. 10 (2024): 944-956.
  5. EASL-EASD-EASO臨床診療ガイドラインの代謝機能不全関連脂肪性肝疾患(MASLD)の管理に関するガイドライン

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